続 好きなもの
僕の周りにはヒロト好きの友達が1人だけいる。そいつは中学の後輩で、中学生の時にそれを知ってからは、お互いに今好きな曲の話をしては、あーでもないこうでもないなんて内容の無い話を時には朝までしてた。
で、そいつはヒロトが好きで、やっぱりボーカルだしあのパフォーマンスだし、カッコいい。それは僕も重々わかる。
でも僕はどちらかというとマーシーの方が好きなのかもしれない。
マーシーの曲は情景をキレイに捉えた絵本のような歌と現実の中で消化しきれない思いの「カス」みたいなものが込められたような歌とに分かれる気がする。
前者はヒロトの曲にも見て取れて、あるいはヒロトが作る曲は真理を突いたような歌であっても童話っぽくなる(気がする。あくまで個人的感想だけれども)
そして僕はマーシーの歌の中でも後者の歌が好きなのだ。
有名なところでいえば「チェインギャング」だったり「train train」といった曲には、何かこう世の中や自分に対する不満や葛藤のようなものが受け取れる。平成のブルースやブルースをけとばせといった曲も僕にとってはそう。
マーシーがまだ若かった頃(breakers時代も含めて)にはそうした曲が多いように感じられるが、中でも僕はマーシーがソロで歌った「こんなもんじゃない」(別名ボニーとクライドの唄)が大好きなのである。
ヒロトとマーシーは2人とも「やりたいことやるのがいい」という芯があって、それを貫いているからこそ僕みたいなファンはカッコいいなぁ…と心酔する訳だが、2人が全く同じように見えるかと言われれば違う。
ヒロトはとても能天気(のように見え)悩んでいる部分をあまり晒さない。(苦悩していたことなどはあるが、曲としてパッと聞いた時にあまり反映されていないように見える)
それに対してマーシーの曲には葛藤や苦悩といった、ある意味人間としての「負の感情」が見え隠れする。
僕にとって2人ともヒーローなのだが、ヒロトはスーパーマンみたいで、僕はヒロトのようにはなれない。(かといってマーシーのようにもなれる訳ではないと分かっているが)
憧れるし、カッコいい!!って思う。本当に思う。でも自分ではあんなに強くないのだと分かっている。きっとヒロトはロックやパンクが大好きで、それを好きだという「思いを貫く姿」で人を撃つ。打つというより僕は撃たれた感覚だからこちらの表現の方が近いだろう。
でも例えば、好きだという思いだけでは貫けないんだよ…という不安に潰されそうになることだって時にはある。
マーシーはそうした弱さの部分をさらけ出す強さのようなものがある。
普段は「ギターが好きなんだぜ。ロックがあれば良いんだ」と貫きつつも、日々の葛藤を映し出したような曲もあって、僕みたいな弱い人間はそうした曲に共感する。
でもその葛藤を乗り越えて「好きなんだ」という気持ちを貫けるマーシーに憧れているのだ。
同じヒーローでもマーシーはスパイダーマンに近いのかもしれない。
自分は正しいかといった葛藤の中で正義とは何かを悩む姿がスパイダーマンにはある。
勧善懲悪の世界で絶対的ヒーローとして登場するスーパーマン。
これはあくまで個人的見解だし、色んな見方があって当然だが、僕はきっとこんな気持ちを持ちながら2人に憧れ続けてきたのだと思う。
少し話がズレてしまったが、「こんなもんじゃない」について。
この曲の言葉の端々では、世間の見方や捉え方を痛烈に批判している。
「確かに本当に見えたことが一般論にすり替えられる。確かに輝いて見えたものが ただのキレイごとに変わる」というような部分に見られるように。
同時に自分への言い聞かせのような部分もある。
「百科事典を暗記しても俺は何にも知っちゃいねぇ 知ったかぶりでいい気になって路頭に風も吹きやしない」 これは言葉どおり受け取れば、何かの知識を身につけてひけらかしていたような自分に対する批判のようにとれるし、あるいは自分は知識とかなんてものが自身にとって「1番」大切なものなんかじゃないんだ。とほのめかしているのかもしれない。
そしてサビで繰り返される「こんなもんじゃない」という言葉は、自分が表現したり、見たりしたものが一般的な見解で消化されてしまうことへの不満があらわれている。ここが僕は1番好きな部分だ。
僕が持つヒロトのイメージでは、周りがどうこう言おうがカンケーねぇよと押し切ってしまうような部分を、「そんな簡単に受け流したりなんかできないよ。俺はそんな風に捉えられることが嫌だ!」と見られる所が好きだ。(もちろんマーシーの曲にも関係ねぇよパワーがあるが)
きっとヒーロー視されることは嫌なのだと思う。これはヒロトも同じかもしれない。好きなコトをやって、結果楽しんでくれる人がいる。ガキンチョだますのがロックだからな。とヒロトが言ったように。
曲の中では抜群に明るいヒロトと暗さや人間の嫌な部分を出すマーシー。
その中で自分自身を出し切っている姿がカッコいいのだと改めて痛感する。